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【眼科医が解説】新しい緑内障の目薬「ロープレッサ点眼液(ネタルスジル)」とは?1日1回の点眼で眼圧を下げるしくみ・副作用
◆ 目次
◆ ロープレッサ点眼薬とはどんな薬?
◆ どのようなしくみで眼圧を下げるの
◆ どのような方が対象になりますか
◆期待されている点
◆ これまでの緑内障の目薬と位置づけ
◆正しい使い方
◆副作用と注意していただきたいこと
◆ よくあるご質問
◆ まとめ

緑内障の治療で、いま確実に効果があるとわかっている方法は「眼圧(目の中の圧力)を下げること」だけです。眼圧を下げ続けることで、視神経のダメージが進むスピードをゆるやかにできると考えられています。
2026年6月、緑内障・高眼圧症の新しい点眼薬「ロープレッサ点眼液0.02%」(一般名:ネタルスジルメシル酸塩/参天製薬)が国内で承認されました。これまでの目薬とは異なるしくみで眼圧を下げる薬で、1日1回の点眼で使用します。
「今までの目薬と何が違うの?」「自分にも使えるの?」と気になっている方に向けて、当院の医師が特徴と注意点をわかりやすく解説します。
| この記事のポイント 2026年6月19日に国内で承認された、緑内障・高眼圧症の新しい点眼薬です房水(目の中の水)の「出口」を広げる作用と、「つくられる量」を減らす作用をあわせ持ちます点眼は1日1回。使えるのは「他の緑内障の目薬で効果が足りない場合」「他の目薬が使えない場合」です点眼後に白目が赤くなる(結膜充血)ことが多く、あらかじめ知っておくことが大切です |
1. ロープレッサ点眼液とはどんな薬?
ロープレッサ点眼液0.02%は、「ROCK(ロック)阻害」と「NET(ネット)阻害」という2つの作用をもつ、緑内障・高眼圧症の点眼薬です。国内では2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。
海外では先行して使われており、米国では2017年に「Rhopressa」、欧州では2019年に「Rhokiinsa」の製品名で承認されています。
基本情報
- 製品名:ロープレッサ点眼液0.02%
- 一般名:ネタルスジルメシル酸塩
- 製造販売:参天製薬株式会社
- 国内承認日:2026年6月19日
- 効能・効果:緑内障、高眼圧症(他の緑内障治療薬が効果不十分、または使用できない場合)
- 用法・用量:1回1滴、1日1回点眼
※本記事の作成時点では薬価基準への収載前のため、実際にお使いいただける時期は未定です。当院での取り扱い開始時期については、診察時にお問い合わせください。
2. どのようなしくみで眼圧を下げるの?

目の中には「房水(ぼうすい)」という透明な液体がつねに流れていて、栄養を運ぶ役割をしています。房水は毛様体という場所でつくられ、隅角にある「線維柱帯(せんいちゅうたい)」という排水口から目の外へ出ていきます。
この排水口が目づまりすると、蛇口を開けたまま排水口がつまった洗面台のように房水がたまり、眼圧が上がってしまいます。
ロープレッサは、この流れに対して2方向から働きかけます。
- ROCK阻害作用:線維柱帯(房水の主な出口)の抵抗をやわらげ、房水が出ていきやすい状態にします
- NET(ノルエピネフリントランスポーター)阻害作用:房水がつくられる量そのものを減らします
つまり「排水口の詰まりをゆるめる」働きと「蛇口をしぼる」働きの両方をあわせ持っている点が、この薬の特徴です。
3. どのような方が対象になりますか?
ロープレッサは、緑内障・高眼圧症のどなたにでも最初から使う薬ではありません。承認された効能・効果は「他の緑内障治療薬が効果不十分、または使用できない場合」に限られています。
具体的には、次のような状況が想定されます。
- プロスタノイド受容体関連薬(ラタノプロストなど)を使っていても、目標としている眼圧まで下がらない
- 複数の目薬を使っているが、まだ眼圧のコントロールが十分でない
- 気管支喘息や心臓の病気などがあり、β遮断薬など使える目薬が限られている
実際に使用できるかどうかは、眼圧の値、緑内障の病型や進行の程度、これまでの治療経過、全身の状態などをふまえて医師が判断します。ご自身の目薬を変更・追加したいと思われた場合は、まず診察の際にご相談ください。
4. 期待されている点
1日1回の点眼ですむ
同じROCK阻害薬であるリパスジル(グラナテック)は1日2回の点眼が必要ですが、ロープレッサは1日1回です。点眼の回数が減ることは、忙しい方や複数の目薬を併用している方にとって、続けやすさ(アドヒアランス)につながると考えられています。
他の目薬との併用が想定されている
国内では、リパスジル点眼液と比較する試験、ラタノプロスト点眼液に追加して行われた併用試験、長期投与試験の3つの第III相試験が実施され、その結果にもとづいて承認されました。すでに使っている目薬に追加する使い方も想定されています。
全身への影響が比較的少ないと考えられている
β遮断薬は、気管支喘息や徐脈などの持病がある方では使用できないことがあります。ロープレッサは全身への影響が比較的少ないと考えられており、そうした方の選択肢のひとつになり得ます。ただし、体質や併用薬によって注意が必要な場合もありますので、持病やお薬手帳の内容は必ず医師にお伝えください。
5. これまでの緑内障の目薬との位置づけ
緑内障の目薬には複数の種類があり、それぞれ働き方が異なります。主なものを整理すると、次のようになります。

6. 正しい使い方
点眼の回数とタイミング
- 1回1滴、1日1回点眼します
- 点眼する時間帯は、毎日なるべく同じ時間にそろえてください。具体的な時間帯は医師の指示に従ってください
- 点眼後の充血が気になる方には、夜に点眼する方法をご提案する場合があります
上手に点眼するコツ
- 1回につき1滴で十分です。多くさしても効果は変わらず、薬液がむだになります
- 点眼したあとは、まぶたを閉じて目頭(鼻寄り)を1〜2分ほど軽く押さえます。薬が鼻やのどへ流れるのを防ぎ、目の表面にとどまりやすくなります
- 容器の先がまつ毛やまぶたに触れないようにしてください
- 他の点眼薬と併用する場合は、5分以上あけてから次の目薬をさしてください
- コンタクトレンズを使用している方は、点眼前にはずし、しばらく時間をあけてから装用してください(詳しくは医師・薬剤師にご確認ください)
- 自己判断で中止したり、量を減らしたりしないでください。緑内障は自覚症状が出にくいため、「調子がよいから」と中断すると気づかないうちに進行することがあります
7. 副作用と注意していただきたいこと
安全に続けていただくために、起こりやすい変化についてあらかじめお伝えします。
白目が赤くなる(結膜充血)
国内の臨床試験では、約56%の方に結膜充血が報告されています。目の中の血管を広げる薬の性質によるもので、多くは一時的です。ただし頻度が高いため、人と会うお仕事の方などは、あらかじめ知っておいていただくことが大切です。気になる場合は、点眼の時間帯の調整や他の薬への変更を検討しますので、ご相談ください。
黒目の変化(渦巻き角膜/角膜渦状混濁)
国内の臨床試験では、約22%の方に報告されています。角膜(黒目)にうずまき状のうすい模様がみられるもので、通常は見え方に影響しないとされ、点眼を中止すると改善することが多いと報告されています。当院では、定期的な診察のなかで細隙灯顕微鏡検査を行い、角膜の状態を確認します。
白目の出血(結膜下出血)など
白目の一部が赤く見えることがありますが、多くは自然に吸収されます。このほか、アレルギー性結膜炎、目の痛みやかゆみ、まぶたのふちの色の変化などが報告されています。
| こんなときは早めにご相談ください 目の痛みが強い、急に見えにくくなった充血が日ごとに強くなる、目やにが増えたまぶたの腫れやかゆみが続く |
※ここに挙げたものがすべてではありません。気になる症状があれば、自己判断で中止せず、まずご連絡ください。
8. よくあるご質問
Q. 今使っている目薬をやめて、ロープレッサに変えたほうがよいですか?
A. いいえ、そうとは限りません。ロープレッサは「他の緑内障治療薬で効果が不十分な場合」などが対象の薬です。現在の目薬で眼圧が目標の範囲に入っていれば、変更する必要はありません。
Q. 点眼を1回忘れてしまいました。どうすればよいですか?
A. 気づいた時点で当日中であれば1回点眼し、翌日からはいつもの時間に戻してください。2回分をまとめて点眼しないでください。
Q. 充血は必ず起こりますか?
A. 全員に起こるわけではありませんが、臨床試験では半数以上の方に報告されており、比較的多くみられます。程度には個人差があります。
Q. 保険は使えますか?
A. 医師の処方が必要な医療用医薬品で、薬価基準に収載されたのちは保険診療で処方されます。自己負担額は保険の種類や負担割合によって異なります。
Q. 緑内障は目薬だけで治りますか?
A. 緑内障で一度失われた視野を元に戻すことはできません。治療の目的は、眼圧を下げて進行をできるかぎりゆるやかにすることです。点眼で目標の眼圧に届かない場合には、レーザー治療や手術を検討することもあります。
9. まとめ
ロープレッサ点眼液は、房水の「出口を広げる」働きと「つくられる量を減らす」働きをあわせ持つ、1日1回点眼の新しい緑内障・高眼圧症の治療薬です。
これまでの目薬では眼圧が十分に下がらなかった方、持病のために使える目薬が限られていた方にとって、選択肢のひとつが増えたことになります。一方で、結膜充血をはじめとする副作用の頻度は決して低くなく、どなたにでも適した薬ではありません。
緑内障で何より大切なのは、ご自身に合った治療を見つけ、それを長く続けていくことです。眼圧や目薬について気になることがありましたら、どうぞお気軽に当院の医師・スタッフまでご相談ください。
※本記事は、2026年8月時点で公表されている承認情報および各薬剤の添付文書等の情報にもとづき、一般的な情報提供を目的として作成したものです。特定の薬剤の使用をおすすめするものではなく、また効果を保証するものでもありません。実際の治療方針は、診察のうえ患者さんごとに判断いたします。
参考:参天製薬 ニュースリリース(2026年6月19日)/各薬剤の添付文書